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台東区にある書道博物館を訪れました。

この博物館は、日本および中国の名筆・拓本・書道資料を体系的に収蔵・展示する、日本でも数少ない書の専門博物館です。常設展示に加え、時代ごとの企画展が行われており、書の歴史を静かに、しかし深く味わうことのできる場所です。

この度は「明末清初の書」をテーマとした企画展が開催されており、中国書法史の大きな転換期に活躍した書家たちの作品を鑑賞する貴重な機会となりました。激動の時代を背景に生まれた筆致の中には、技法の洗練のみならず、書家一人ひとりの生き方や精神の在り方が色濃く反映されており、静かな展示室の中で、時代の息遣いを感じるひとときとなりました。

中でも強く心を惹かれたのが、王鐸の作品です。

王鐸は明末から清初にかけて活躍した官僚であり書家で、明にも清にも仕えた複雑な立場の人物として知られています。政治的には揺れ動く時代の中で生きながら、書の世界では極めて高い完成度と独自の境地を築き、現在では「明末清初を代表する大家」として高く評価されています。

明までの書を清へも引き継いがせました。王羲之の書をよく臨書したとされ、作品の造形美が連綿草が続く作品にも垣間見れます。

王鐸の書は、力強さと繊細さ、激しさと静けさが一筆の中に同時に存在するような、不思議な魅力を持っています。大胆な運筆の中に、緻密な構成と深い余韻があり、見る者の心を静かに、しかし確かに揺さぶります。時代の動乱の中で抱えた葛藤や矛盾が、筆線の一つひとつに滲み出ているようにも感じられました。

今回、王鐸の作品「華」を臨書しました。

線の太細、転折の角度、墨の濃淡、行間の呼吸に至るまで、できる限り王鐸の筆意に近づけるよう心を込めて筆を運びました。臨書を通して、単に形を写すだけではなく、王鐸がその一字一字に込めた精神や時代背景に思いを巡らせる時間は、非常に豊かな学びとなりました。

拙筆ではありますが、王鐸の持つ美しさ、そしてその書に宿る気韻の一端でも反映できていれば幸いです。

書は時代を越えて、人の心と心を静かにつなぐものだと、改めて感じさせられた一日でした。